これから修士論文Magisterarbeitの執筆に専念します。また、この後最低でも半年間は更新のネタもないと思いますので、このブログは一旦、これで終了します。短い間でしたが、お付き合いいただきありがとうございました。
私は、一昨年の10月に夫の仕事の都合で来独しましたが、元々ドイツに格別興味があったわけではありません。ドイツ語学習はドイツ駐在が決まった直後に始めたくらいで、来独時は簡単な挨拶程度しかできませんでした。ドイツ法にも特に興味があったわけでもなく、ミュンヘン大学LMUでのLLMに応募したのも、他大学のいろんなプログラムと慎重に比較検討した上の選択ではありませんでした。去年の10月に誕生した43歳の中年留学生は、まったく無計画・無節操なおばはんでした。
しかし、大学での勉強には、年齢やドイツ語学習歴が短いことなんぞの言い訳は効きません。決められたプログラムについて来るか、来ないか、それだけです。もし、プログラムに不足があったり、不満がある場合は、自分で声をあげて大学当局にアピールしなければなりません。アピールはうまくいくこともありますが(例:民法のAGの設置)、うまくいかないこともあります(例:公法の講師Dr.Kの筆記試験の採点結果の再考)。
さて、一応ZOPもDSHもクリアして入ったLLMですが、予想通り、講義の内容を100%聞き取って理解するのは無理でした。そのため講義に出る時間の倍の時間を予習・復習に費やすことになりました。しかし、法律の条文は言うに及ばず、その理解を助けるための教科書や参考書を読んでも、最初は時間がかかるばかりでなかなか理解できません。読むのが苦痛で何度も投げ出しそうになりましたが、喰らいついて何度も繰り返し読んでいくうちに、難解だった文章がいつの間にかスーっと頭に入ってくるようになったのですから、不思議なものです。そのうち、講義の聞き取りも格段に楽になりました。教科書・参考書を読むことと、講義に出て聞くことは補完的な役割を持っているので、どちらもおろそかにしない方がいいと思います。他に大事なことは、あきらめない根性と体力、そして時間を上手に使うコツくらいでしょうか。勉強は大変ですが、気分転換も大事ですから、大いに遊んでいいと思います。しかし、いろんなことについて、まずできない言い訳から考えるような、後ろ向きの時間の使い方はもったいないなぁと、私は思います。
冬学期の留学生の中には、エラスムス制度でEU域内の他大学から来ている若い子が多く、冬学期はザワザワと落ち着かない感じでしたが、結局、夏学期の一番最後まで生き残ったLLMの正規履修生は30代以上の大人の学生が多かったようです。私のような駐妻留学生も結構いて、中には幼児を抱えた現役ママや、大きなお腹を抱えた妊婦さんもいました。こうして忙しい時間をやりくりして勉強している留学生仲間の姿は、自分に喝を入れるいい刺激になりました。
私の場合、かなり行き当たりばったりで始めたLLMでしたし、マンモス大学LMUの設備や運営方法には不満もありますが、それでも学ぶことの楽しさを再発見する貴重な経験になったと思います。論文書きという一番好きなヒッキー作業がまだ残っていますが、大学でのその他のプログラムがほぼ終わってしまったことが今となってはちょっと残念です。
留学生たちの今後は、LMUで博士課程(Promotion)に進む者、母国に帰って働く者、ミュンヘンに残ってドイツの法律事務所で実習生として働く(Praktikum)者などなど分かれてしまいますが、それぞれがViel Erfolgに恵まれますように!
LMUのLLMに来る日本人は、数年に1人いるかいないかくらいだそうなので、このブログの内容が直接役に立つ可能性のある対象は非常に限られているわけですが、逆に言えば、それだけこのLLMに関する情報が不足しているこということですから、私が使った教科書や参考書類などを中心に、勉強方法も含めて記録に残しておこうと思います。
民法
2007年冬学期以降もDr.Pが担当講師として残るのであれば、彼は講義の最初の時間に、推薦する教科書・参考書を複数教えてくれます。その中の1冊は必ず買いましょう。私が買ったのは、CH Beck出版のGrundkurs BGB(Hans-Joachim Musielak著)です。何冊も買うよりは1冊をじっくり読み込む方が、最終的には効率的だと思います。Musielakの教科書は、各章の終わりに、小さなFälle und Fragen集があって、これを使って自分の理解を検証することが可能なので、私はMusielakをお勧めしますが、Dr.P推薦の本はすべて大学周辺の本屋に出ていますので、実際に手にとってご自分の使いやすそうなものを選んでください。
そのほかに筆記試験前に、Repetitorium、Alpmann Schmidtの教材Skriptを利用しました。このSkriptはとてもコンパクトにまとまっていてわかりやすいので、Musielakの教科書の内容が理解できなかったところを中心に、ずいぶん助けてもらいました。中央図書館の教科書コーナーにおいてあります。
講義はケーススタディが中心なので、Fallbearbeitungについては別の教材を使う必要は特にないと思いますが、 Metzner出版のFälle mit Lösungen für Anhänger im Bürgerlischen Recht(von Olaf Werner著)という本だけは、図書館で借りて使いました。ここで扱われているケースはAllgemeiner Teil(総則)だけなのですが、筆記試験の解き方のヒントになる部分がたくさんありますので、時間が許せば読むといいかも知れません。
しかし、何より一番大事なことは、法律の条文をよく読むこと、です。教科書や講義録だけでなく、必ず出てきた条文は理解できるまで読んでおきましょう。筆記試験のときも口頭試験のときも、Beck出版のBürgerlisches Gesetzbuch(BGB)だけが頼りですから、日ごろから仲良くしておかないといけません。
刑法
2007年冬学期以降もDr. Wが担当するならば、彼女の講義録は大学近くのコピーショップで売っていますので、まず、それを買いましょう。それから、教科書・参考書としてC.F.Müller出版のStrafrechtを推薦されます。このAllgemeiner Teil(Wessels/Beulke著)は買った方がいいです。Besonderer Teilは数冊に分かれており、授業ではBesonderer Teilのすべての罪を勉強するわけではないので、Besonderer Teilは買わないで図書館で該当箇所を読むので十分だと思います。もちろん、もっとも大事なWerkzeugは、Strafgesetzbuch(StGB)です。刑法の講義で触れる条文数は限られていますので、主要な条文番号は暗記できるくらいに読み込んでおきましょう。
刑法のケーススタディは、AGアルバイトゲマインシャフトでやりますから、ここに出ていれば十分です。私が受講したときのAGのLeiterは熱心なすごくいい人で、インターネット上にAGのHPを作ってくれて、AGで使った資料や解答もそこにアップされましたし、模擬答案の添削まで2回やってくれました。同じようによいLeiterにあたればいいのですが、もしそうでなかった場合には、2006年冬学期のLeiterのようにHPを作ってくれ、とアピールしてみてください。
公法
問題の公法です。Dr. Kは、教科書・参考書とも推薦してくれませんでした。仕方なく何冊か図書館で借りた本を利用しましたが、全部のタイトルを覚えておらず、ここで書くことができません。一応、手元にコピーを残しているのはStaatsrecht mit Grundzügen des Europarechts(Rohr著)だけです。これは比較的読みやすかったですが、できれば、もっとコンパクトにまとまっているものも読んでおきたかったです。それから、ケーススタディ用として、Luchterhand出版のFälle mit Lösungen für Anfänger im öffentlichen Recht
-Staatsrecht und Methodik- (Jörg Lücke/Dieter Kugelmann著)という本には目を通しておくといいと思います。Dr. Kが担当講師であれば、授業中にケーススタディをやる機会はほとんどないので、こういう参考書で解答のAufbauだけでも頭に入れておきましょう。
法律は、私はBeck出版のGrundgesetz(GG)とVerwaltungsgerichtsordnung(VwGO)の2冊を使いましたが、Grundgesetz、Bundesverfassungsgerichtsgesetz、VerwaltungsverfahrensgesetzとVerwaltungsgerichtsordnungの4つの法律が1冊でカバーされているものがあれば、そちらを買った方がいいかも知れません。
民法と公法の講義録は、法学部のインターネット上のHPにアップされるシステムになりました。大学のコンピュータールームまで行かなくても、家のPCからダウンロードできるように、最近システムが変わったのです。ドキュメントプールは
こちらですが、中に入っているドキュメントはLMUの学生としてパスワードを持っている者だけが開けます。
その他選択科目
ほとんどの場合、最初の授業で教授が推薦する教科書・参考書について言及します。最初の授業では、1学期間の講義の流れなども説明されますから、必ず最初の授業には遅刻しないで出席しましょう。
LLMを始める前に
私が読んだのは、Starkという出版社が出しているAbitur-Wissen Wirtschaft・Rechtという本です。これは、大学の経済学部・法学部を目指す高校生が読むものらしく、ドイツ語の家庭教師から推薦されました。多少なりとも、ドイツ法の概念や法律用語に慣れておくにはいいかも知れません。
日本語で書かれたドイツ法の本は、日本まで買いに帰る暇がなかったので読んでいません。基礎的な理解の助けとして日本語で書かれたドイツ法の本を読むことは、役に立つと思いますが、LLMの筆記や口頭試験に合格するためには、やはりドイツ語の専門書を最初から読んだ方が効率的です。ドイツ語でアウトプットするのですから、インプット部分からドイツ語であった方が、自分の頭の中で日本語からドイツ語に変換する手間が省けます。
辞書
大学書林のドイツ法律用語辞典(山田晟著)とAlpmann BrockhausのFachlexikon Rechtを使いました。ドイツ法律用語辞典は、ドイツ在住の日本人の方から譲っていただき、Alpmann Brockhausの独独法律用語辞典は、Amazonで中古を入手しました。
LMUのLLMに応募するには
こちらをごらんください。今年は既に申請期限の7月15日を過ぎてしまいましたが、期限までに応募書類をすべて提出すると、大体8月中旬頃には合否の結果が出ると思います。