ZOPには、筆記試験と口頭試験があります。筆記試験に合格した者だけが、日を改めて口頭試験を受けることができます。筆記・口頭試験の構成は以下の通り。
筆記試験
1. Texterklärung長文読解 (90分:50点満点)
2. Ausdrucksfähigkeit表現力 (90分:70点満点)
3. Hörverstehen聴き取り(ヒアリング) (約45分?:40点満点)
4. Aufsatz作文(エッセイ) (90分:70点満点)
口頭試験 (約20分:80点満点)
5. Textzusammenfassung
その場で渡された短い新聞記事やエッセイの朗読+要約(自分の言葉で)+質疑応答
6. Vortrag
自由課題の発表+質疑応答
合計310点満点のうち、273点以上がsehr gut(優)、229点以上がgut(良)、186点以上befriedigend(可の上)となり、それ以下は不合格です。ZMPではausreichend(可の下)までが合格になるのに比べると、ZOPは既にこの時点でも厳しくなっています。なお、筆記試験の1項目に単体でbefriedigend以下の点数があった場合、それが1、2点の差ならば、他の項目でカバーできるとみなされるのですが、極端に点数の悪い項目があった場合は、その時点で不合格になってしまいますので、ZOPの場合は、いずれの項目も満遍なく得点できるような総合力が求められているといえます。
1. Texterklärung
A4用紙2~3枚程度の長文を読んで、それに関連する問題に回答します。テーマは毎年異なりますが、大体新聞や雑誌の記事が使われているようです。問題は、さらに3項目に細分されます。
① Fragen zum Textinhalt(内容に関する質問:12~15問程度)
ここでは、文章の内容についての質問に対して、ドイツ語で完全な文章を書いて回答します。質問の大半が元の文章から抜き書きする形では回答できないようになっており、ある程度内容を自分で消化・要約して自分の言葉で書き直す必要があります。
② Umformung einzelner Textstellen(文章の一部の書き換え)
ここでは、文章の一部が抜粋され、それを書き換える形式の出題が7問程度、davon、sieのような指示代名詞などが文章中の何を指すのかを問う問題が5問程度出ます。書き換え問題は、意味が通るだけでなく、文法的にも正しい書き換えであることが要求されます。たとえば、Dienstleistung
bedarf eines Qualitätsmaßstabsという文章で、下線部分のbedarfを書き換える場合、bedürfenは2格の目的語を取る珍しい動詞ですから、これを同意の4格を取る動詞verlangenで書き換えるときは、動詞の部分だけでなく、続くeines2格をeinen4格に書き直し、続く名詞のQualitätsmaßstabsも4格に直す必要があります。
③ Bedeutung der Wörter
ここでは、文章中の単語6個程度が抜粋され、その単語を説明する課題が与えられます。ここでは、文法に関係なく、単語の意味だけ説明できればOK。
90分の試験時間が終了すると小休止となり、問題・解答用紙が回収されます。
2. Ausdrucksfähigkeit
この表現力を問う部分は、さらに3つの部分に細分されます。
① 前置詞穴埋め問題
1で読ませた文章に関連する内容のA4用紙1枚程度の文章中に、20個弱の穴が空いています。そこに、該当する前置詞を埋めていきます。前置詞は意味が通るだけでなく、文章の前後の格変化や動詞との結びつきがあっていないといけません。
② 全体書き換え問題
1で読ませた文章に関連する内容のA4用紙3分の1枚程度の文章が与えられます。文章中の単語10個弱に下線が引いてあり、その横に別の単語が与えられています。その与えられた別の単語を使って、文章全体を書き換えます。1の②に似たような書き換え問題ですが、指示された単語を使わなければならず、さらに決まった動詞と名詞の結びつきや、前置詞の補足などは自分の判断にかかっています。
③ 文章書き換え穴埋め問題
ここでは、15~20問程度の文章を書き換える作業が待っています。これでもか、これでもかと畳み掛ける書き換え問題!必ず出題されるのが、Modalverben(助動詞)の書き換えと、副文を副詞句に、あるいはその逆に書き換えさせる問題です。実は、こういう文法重視の出題は、日本人にはとっつきやすいのではないか、と私は思います。
ここまで終わった時点で45分の昼休みがもらえます。お昼を食べて午後の部に備えましょう!
3. Hörverstehen
さて、私の苦手な聞き取りで、午後の部が始まります。2005年に続いて2006年は出題がインタビュー形式で、非常に聞き取りにくかった!
まず問題と解答用紙を読む時間が5分間与えられます。それから、テープが全体通してノンストップで1回流されます。その後、2回目のテープの聞き取りの際には、途中要所要所でテープが止まって1分間メモを取る時間が与えられます。さらに、2回目のテープが流れた後、15分間、解答をまとめる時間が与えられます。
ここで大事なことは、解答は完全な文章で書く必要はないということ。問題が15問弱あるので、完全な文章で解答する時間はありません。採点者に理解可能な程度の短い表現で、できるだけ多くのポイントを簡潔に解答することが肝要です。
ここでトイレ休憩タイムが入ります。
4. Aufsatz
エッセイの課題は、Lektürgebundene ThemenとFreie Themenの2種類があり、受験者が自ら選択することが可能です。Lektürgebundene Themenは、予め毎年指定される課題図書の1冊を読み、それに関連した質問に解答するものです。Freie Themenは4つの質問から自分で選択したものについて、自分の考えを書くことになります。
Lektürgebundene Themenの場合は、予め課題図書を読んでおく必要がありますが、質問の内容自体はそんなにひねりがありません。逆にFreie Themenの場合、なんじゃこりゃーというものも多く、短時間で自分の考えをまとめて書くのは簡単じゃないと思います。いずれも最低250字書く必要があります。
ところで、ここで一番大事なことは、文章の構成とロジックです。どんなに正しい文章でも、それを取り留めなくダラダラ書いては、絶対合格できません。まず、質問の内容に即したEinleitung(導入)、Hauptteil(主要な議論)、Schluss(結論)の構成を考えます。構成を考えずに、いきなり書き始めてはいけません。Hauptteilの中で、対立する概念や長所短所などをうまく議論して(Einerseits一方では・・・, Andererseits他方では・・・)、各文を上手に接続詞でつなぎ、最後に自分の考えを述べて結論付ける、という形式で、なるべく多様な表現を使って作文することが高得点を獲得するコツです。長く書く必要は全くありません。書けば書くほど、文法や表現の間違いの減点箇所が増えてしまって逆効果である、と採点するゲーテの先生は言っています。
さて、筆記試験はここで終わり。3日後の合格発表を待ちましょう!
5. Textzusammenfassung
課題の文章を渡され、約15分の準備時間が与えられます。A4用紙1枚弱の文章(新聞・雑誌の記事が多い)を読んで、内容を要約できるように大事な部分に線を引いたり、自分でメモを取っておきます。さらに、4つある関連した質問のうちいずれかを選んで、自分の意見を言えるように考えをまとめておきます。
準備時間が終了すると、2人いる試験官のうち1人が迎えに来ます。試験室に入ったら、簡単な自己紹介をします。それから、与えられた文章を大きな声で朗読します。その際、試験官は発音・イントネーションだけでなく、息継ぎの部分も見ているようです。息継ぎって何?と思われるかもしれませんが、ドイツ語の文章は長くなりがちで、意味のあるブロック毎に区切って読まないと、その文章の意味自体わかってないと思われてしまうので、息継ぎ箇所は大事なんです。
朗読し終わったら、「内容を要約してください」といわれますので、自分の言葉で簡潔にポイントを話します。ここで長く話す必要はありませんが、大事なポイントを漏らさないようにしなければなりません。それから、自分で選んだ質問について、さらに短く自分の考えを話します。そうすると、試験官がそれについて2~3質問しますので、また簡潔に応答します。
6. Vortrag
ここでは5分間の持ち時間に、予め用意した自分の好きな内容について、発表します。私のテーマは、日本語でした。予め準備ができるので、ここで話す内容については、文法や表現の間違いがないように、正確を期しましょう。なお、早口で不正確に話すよりは、ゆっくりと正確に話す方が得点は高いようです。
ここでも発表内容について試験官との質疑応答があるのですが、私は話し終わった後にまとめて質問されると思っていたのに、話の途中で何度も止められて質問されたのは想定外でした。そのため、ある部分は予定よりも補足説明を加え長く話すことになり、他の部分は端折ったりして時間を合わせました。こういう臨機応変な対応が試験官の心象に影響する可能性があるので、焦らず落ち着いていきましょう。難しい質問のときは、Das ist eine gute Frage(それはよい質問ですね)などといいながら、解答までの時間を稼ぎます。
口頭試験の試験官は、基本的に合格させようと思っていますので、怯える必要は一切ありません。口頭試験が終わったら、5分後くらいに結果がわかります。合格したら、その日のうちに合格証書がもらえます。
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ZOPの受験準備は独学では難しいというのが私の印象です。ZOPの過去問題はゲーテの図書館に備え付けられていますし、語学学校でZOP準備コースがあるところなら、入手は可能です。しかし、ZDやZMPのように自習のための問題集が出版されているわけではありません。強いて言えば、Schubert出版のDas OberstufenbuchがZOPの出題傾向を意識したつくりになっています(これは、ゲーテの上級クラスの教材です)。
私はその他にHuerber出版のSag's besser!第5巻と第6巻を自習用に使いました。また、同出版の文法書Übungsgrammatikも利用しました。これらは、上記2の③のModalverbenの書き換え問題などの練習に非常に役立ちました。これらの練習問題・参考書は、ゲーテの図書室↓に備え付けられており生徒は借りることが可能です。
ゲーテ在校生の皆さんは、図書・視聴覚室を上手に利用して、少しでも高い授業料の元を取りましょう!